教員の働き方改革 岡崎勝 赤田圭亮 編

元教員や現教員が書いた短い論文が集まった本

心に残った部分と感想

① 教育とは監視することなのか

うちの子がいじめられていると親が言えば、いえおたくの子はいじめられてはいませんとものすごい量の資料を出す。微細に観察しているそういう先生が出始めています。そういう先生には親も怖くて言えない。返り討ち。そういう先生は自身満々だから攻撃的エビデンスです。そうすると不登校が出る

p32

ここを読むとなんか親も子も可哀想だなと思う。だけど自己弁護する教員側の気持ちもわかってしまう。これにはいじめの定義がかなり関係していると思う。「いじめだとその人が思ったらいじめ」バカって一回言われてもいじめだと思う子にとってはいじめ。当然、その事実は正しく伝わっていない。かなりの拡大解釈を交えて伝えられている場合もある。どんな時にも証拠として提示できるように監視力が求められるようになってしまった。教育は監視することなのか。違うのはわかっているが、今後ますますそういう方向に向かっていく気がしてならない。先行きが暗い

2 教科担任制の前提条件

教科担任制の場合は特に教科担任と学級担任の連携協議が必要になる。しかもできるだけリアルタイムにである。最近は休み時間にお茶を飲んでいる教員が激減している。実質的には連絡帳の返事やノート点検などをしている。これが良くないのだ。

p115

ゆとりがとにかくないと教科担任制は導入しない方がいいという論に賛成。実際に自分が教科担任をやってみた経験からもそう言える。気軽に話せる場がないと一人でやっている感じになってしまうからである。かといって協議しようとなるとそれはそれで担任の先生の時間を奪ってしまう気がしてなんとも申し訳ない気持ちになる。ちなみに休み時間に担任でお茶を飲んでいる人は見たことがない。それくらいゆとりがあるといいと書いてあったが、別世界すぎてイメージが持てないのがなんとも悲しい。

3変形労働時間制は可能か

すでに各所で触れられているから触れないが、長期休業には授業以外のさまざまな業務が組み込まれる。長期休業期間が「閑」という前提が最初から安易である

p118

確かに子供達がいないので授業による時間的拘束はない。休むことが可能ではあるが、全部休んでしまうと地獄が待っている。だからそうならないように長期休業期間に分散して仕事をしている現状がある。それはわかってほしい。ほぼ全部休みをとる方も一部いらっしゃるがそういう方はほぼ訳ありというのが悲しい。

4 何が増えたのか

とにかく教員なんだから小さいことは気にせずに頑張ろうぜという浅薄な考えが学校現場にも蔓延してきたような気がします。何よりも増えたのが行政の口出しや手出し、アンケート調査である。

p138

「子供のために」この言葉に異議を唱える教員は一体どのくらいいるのだろうか。少なくとも今の自分には無理。だからと言って身を削ってまで働いてはいませんが。流されてしまうのはわかる気がします。絶対拒否できない流れです。調査に関しては、結果が現場に生きてきていると感じたことは残念ながらほとんどないです。本書にもある通りパフォーマンスでしかないと思う。

5プログラミング思考

プログラミング的思考を育成することだと文科省は言う。厄介なのがプログラミング的思考とプログラミングができる技術とは関連はあるが別なのだ。あえて特化して導入する必要があるだろうか。

p147

これにも非常に納得。「もしこうしたらこうなるのではないか。でも待てよ、こっちにしたらこうなってもっと簡単になるのではないか。」このような思考は通常の授業内で散々行われてきた。それをあえて名付けてプログラミング教育として行って得をしているのは関連教育産業だけであると言う文を読んで、闇を感じてしまった。

6 道徳教育とは

道徳の教材では、極限の状況を設定して生徒に個人的な価値判断を迫ることが多い。教材自体がある価値観を誘導する要因を持っていることに気づく感性をもつことが大切だ。指導者の視点がどこにあるかで読み方は違ってくる。自分がどれだけ幅のある読み方をしているかどうか振り返ることが肝要だ

p155

教員も常に学び続けることが重要ということがわかる一言です。教材が本当に使えるのかはその場面に初めて出会ってわかるものだから、色々な体験を学びに変えるそんな指導者でありたいと思いました。

まとめ

働き方改革についてでしたが、ゆとりを現場に持ち込むならやることは一つ。時数削減だと思っています。高学年なんて週30時間です。1時間目から6時間目までびっしりです。自分が子供だったら絶対イヤです。なんでこんなに詰め込みなんですかね。このまま進むのなら土曜があった方がまだいいです。

子供が教室にいる以上、向き合うのが教師の役目だと思っているので、今のままでは働き方改革なんてできません。スーパー教師なら可能か・・・。

全体的に暗い話が多かったですが、書いている著者と対話できる本なので読んで良かったと思いました。表紙からは想像できない読みやすさです。

教員の方には読むことをおすすめします。


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