塞王の楯 今村翔吾
目次
あらすじ 塞王の楯ホームページより
幼い頃、落城によって家族を喪った石工の匡介(きょうすけ)。
https://lp.shueisha.co.jp/tatexhoko/
彼は「絶対に破られない石垣」を作れば、世から戦を無くせると考えていた。
一方、戦で父を喪った鉄砲職人の彦九郎(げんくろう)は「どんな城も落とす砲」で人を殺し、
その恐怖を天下に知らしめれば、戦をする者はいなくなると考えていた。
秀吉が病死し、戦乱の気配が近づく中、
匡介は京極高次に琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。
攻め手の石田三成は、彦九郎に鉄砲作りを依頼した。
大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、信念をかけた職人の対決が幕を開ける。
目次
序
第一章 石工の都
第二章 懸
第三章 矛盾の業
第四章 湖上の城
第五章 泰平揺る
第六章 礎
第七章 蛍と無双
第八章 雷の砲
第九章 塞王の楯
終
登場人物
源斎 石工、飛田屋の頭で多くの城の石垣を手がける。匡介を後継に決めて指導していく
匡介 飛田屋の次期トップ 石を積むこと15年。頭になる修行として荷方、石切の仕事を回る。石の声を聞くことができる
玲次 源斎の血を引くが後継にはなれなかった。荷方として才を発揮し、匡介を支えることになる
段蔵 匡介の面倒見、叱りつけなどを担当、父のような存在
京極高次とお初 大津城城主 戦下手と言われているが家臣と民からの信頼が厚い
国友彦九郎 鉄砲職人 幼き頃に弓の名手の父が鉄砲で撃たれて死んだことを知り、鉄砲職人になることを希望する。
国友三落 鉄砲職人の頭 砲仙と呼ばれる。源斎のライバル
面白ポイント
1 日野城での懸
明智光秀が織田軍を破り、本拠地を制圧しようしていた、それに反抗する蒲生家。
石垣の修理を依頼。源斎が懸を発動。
匡介としては家族を織田家に奪われているので、なんとも複雑な気持ちになるわけです
そこで初めて源斎にキレられるというシーンはなんとも胸が熱くなりました
戦時中に行われる石垣の修復には多くの命がかかっていたということ
そのシーンがありありと目に浮かんでくるようでした。
もう無理かもと思ったときの匡介のひらめきが城を救うことになります。
でもこの戦で甲賀衆との因縁が生まれてしまいます。
2 伏見城を守る源斎
秀吉の遺言 「伏見城をもっと強くしてほしい」
匡介としてはそんな遺言聞かなくていいんだと言って源斎を止めるのですが
全く聞く耳を持ってもらえず、やはり行ってしまうのです。
死地に飛び込むのに「俺は塞王だぞ」と言って背中を向けていくシーンがカッコ良すぎる。
職人魂が半端ないところです。
そこにはあの彦九郎が国友の頭がやってくるんですね。
最新式の大砲がどんなものなのか
一番上から鉄砲を喰らいながらも匡介に伝えようとする場面は涙なしでは読めません
3 大津城の懸
匡介の「懸だ」には痺れました。
大津城はただの城ではない。
匡介にとっては思い入れのある城となっています。
その思いはぜひこの本を読んでもらって感じてほしいです。
あの時の城の一体感はまさに幸せそのものです
大津城を囲むのは4万人の軍勢
さらに無双の立花と手を組んだ国友
もう絶体絶命なわけです。
籠城戦だから持ち堪えれば勝ちなんだけど
そんなの無理じゃんと思えるくらいの激しい攻めに
民が先に折れてしまうんですね
その中で匡介がとった策とはなんなのか
とにかく熱い戦いがあります。
玲次もすごいし、山下もすごいし、高次もすごい。
語りたいそれぞれの戦いがこれでもかというほど詰まっています。
源斎の言っていた奥義を最後に見つけることができたのですが、結論は・・・。
感想をまとめると
山崎の戦い、関ヶ原の戦いなどは歴史が好きじゃない人でも知っているくらいメジャーなものです。
でもその裏にはこういう職人さんたちがいっぱい関わっていて
それぞれの持ち場でかなり苦労をしている。
そこにスポットを当てて書いた作者がすごいなと感心しました。
臨場感がとてつもないので
大砲の音、石垣が弾け飛ぶ音が本当に聞こえた気がしました。
戦国時代に住む人々の思いを感じることができました。
何よりも平和が一番です。